……本当に、何がしたいんだか。
っていうか、話す時ぐらいわたしの目を見て話しなさいよ。
言うだけ無駄だってことは知ってるけど。
「じゃあね。わたし行くから」
「んー。俺も女の子とデートしてくる」
報告しなくていいし。
勝手に行きなさいと漏れそうになったため息をころして、空き教室を出た。
歴代の霧夏のトップに受け継がれている部屋。
そんなうさんくさい部屋は代ごとに内装が変わり、衣沙は全体的に黒を用いてシックにまとめているせいで、おしゃれだ。
なんであの内装も、勝手に部屋をつくってることも学校に怒られないんだろうと思う。
まあどうせ、『不良校だから』とかいう理由だろうけど。
変にダメだとか言って問題を起こされたら、学校側も困るんだろう。
大事にならないように、ある程度のことはゆるく許容していれば良い、なんていうふざけた方向性。
「……どうしようもないわね」
ぽつり、漏れたひとりごと。
普段衣沙と成立しない会話を永遠に繰り広げているせいで、むだにひとりごとが増えてしまって困る。
「あれ、姐さん遅かったっすね。
始業式終わって結構経ってますけど、」
「ああ、うん。
衣沙と話してたから遅くなっちゃった」
たまり場に到着すると、奇抜なピンクヘアーに迎えられた。
名前は百と書いて"もも"。髪にぴったりだ。でも実際は桃じゃなくチェ……うん。
百が散々みんなに弄られてるネタだけど、
さすがにこの時間からそういうネタはやめようか。



