「そうやって取り繕わなくてもいいわよ。
わざわざ女の子断ってまで、機嫌とる必要ないから」
まるで親切心みたいに。
放たれた言葉に、ぐっと苦しくなる。……わかってる。本当に俺が満月ちゃんを好きなんだとしたら、なるみはの出番はその時だけで構わない。
だけど。
俺は。……俺が、好きなのは。
「……それは無理」
ふたりきりの教室。
なるみの机の前に屈んだままの俺は、机に寄り掛かるように額をつけて。表情を見せないまま、なるみにそう告げる。
「ずっと一緒にいたのにさ。
……なるみはそんなあっさり離れられんの?」
俺は無理だった。
なるみへの気持ちが微塵も減ってくれないから。だからなるみを傷つけるのが怖くて、離れようとしたこともある。……でも無理だった。
「俺は嫌だよ。
……だから何言われてもこれはやめない」
「だったら……」
「……だったら?」
離れる方が怖かった。
すこしでも離れた隙に、ほかの誰かがなるみに近づくのを許せなかった。それなら苦しくてもそばにいる方がよっぽどマシだって、そう思ってる。
だってどうせなるみから兄貴への気持ちは叶わない。
満月ちゃんがいる限り、兄貴の気持ちは絶対変わらない。……なら、このまま一緒にいれば、いつかなるみの気持ちが俺に向くことだってあるかもしれない。
甘えてるのはわかってる。
そんな都合のいい話なんて、ないことも。
それでも。
俺は絶対、なるみから離れたりはしない。



