「おはよ、目黒」
「おはよ、衣沙くーん。
さっき外でなんかイチャイチャしてたやつ、動画でまわってきてるよー?」
「マジで〜? みんなちゃっかりしてんな〜」
とはいえ新学期早々の名簿順で、「粟田 なるみ」と「目黒 衣沙」じゃ席が遠すぎる。
ちらっとなるみの方を見れば拗ねたように顔を背けられてしまったから、機嫌のことはあとにしようと声を掛けるのはやめた。
「っていうか、1年の貴公子にも好かれるなんて。
さすが姐さんだよねー、衣沙くん」
「……1年の貴公子って」
「ん? 月宮さおくんのことだよー。
入学式のときに受付担当した子が写真とってて、それが拡散されてもう既に貴公子って呼ばれてるの」
……その呼び方はわからなくもねえけど、なんとなく腑に落ちない。
「ちなみに衣沙くんは2年のお色気男子だよー」とおしえてくれるその子に、「へえ」と返す。
貴公子とお色気男子の差よ。
っていうかお色気男子って、全然嬉しくねえな。
「でも、ねえねえなるちゃんー」
「ん?」
「なるちゃんは、
それでも衣沙くんがいいんだよね?」
尋ねられたのはなるみなのに、なぜかドキッとしてしまう俺。
さっきまであんなに不機嫌だったのに、それが嘘みたいに「うん」と笑うなるみを見て、言いようのない気分にさせられる。
……こうなるように仕向けたのは、俺なのに。
好きだとなるみが嘘をつくたびに、罪悪感ばかりが募ってどうしようもない。



