「ちょ、ちょっとふたりとも。
お願いだからこんなところで言い合いしないで……っ」
だって、と。
それに反抗しようとして、いいこと思いついた、と密かに口角を上げる。
ちょうど人目もあるし、ツキが入学したばかりで目立つ今、これ以上のチャンスってないわけで。
隠していたなるみの腕を、軽く引いて。
「だってムカつくじゃん?
俺のなのに、手出そうとしてくるから」
わざとらしく、なるみの頰にくちづけた。
その瞬間また悲鳴が上がって、さらに顔を赤くしたなるみの姿に満足する。
そうやって、俺のことだけ考えていればいい。
兄貴のこともツキのことも、考えられないくらい。
俺だけで、染まってしまえばいい。
「じゃあお先」
ひらり。
何か言いたげなツキを置いて、なるみの手を引いたまま歩き出す。……これでなるみに近づく男はしばらく出ないだろう。
俺のって証明もしたし、その彼女のなるみをあの美形なツキが狙ってるって知ったら、たいていの連中は怖気付く。
だってどうみても見た目で勝てないし。
「ちょっと、衣沙、」
「ん?」
「ん?じゃなくて。
なんであんなこと言ったの!?」
もちろん、ツキ自身への牽制でもある。



