「衣沙が王子さまでいてくれなきゃ、

わたしは一生幸せになれないじゃない」



「……、そうだな」



「それに……

衣那くんを好きだった頃からわたしのことを好きでいてくれてるんだから、ちゃんと、報われない時間だってあったでしょう?」



条件は満たしてると思うけど、なんて。

笑うなるみに、何度も何度も、惚れ直す。



前に「なるみはドレス似合うだろうな」って言ったことがあるけど。

……それを叶えてやれるのは、誰でもなく、俺がいい。



「でも、王子さまじゃなくていいよ」



なるみの手が、そっと俺の手を握る。

絡んだ視線は、お互いにとても穏やかで。




「……ほかの女の子が見惚れちゃうような王子さまは困るから。

ただの、わたしの、彼氏でいてくれたらいいの」



「……そっくりそのまま返すよ、お姫さま」



微笑み合って、どちらともなく視線を主役にもどす。

……でも俺、自信、あるんだよね。



「そのときがきたら結婚しよう、なるみ」



「へ、」



「プロポーズは、ちゃんと真剣に考えるから」



もしかすると王子さまには誓えないかもしれない、俺だけが絶対に誓えると約束できること。

一生大切に、なるみを愛し抜く自信。