たぶん、すごく些細なことだったんだと思う。

……でも、俺にとっては、大きかった。



──3歳のとき。

俺の大好きな"なるみちゃん"は、俺とよく似た、頼れる兄貴にすごく懐いていた。



──4歳のとき。

俺の大好きな"なるみちゃん"は、何らかの事情があって、俺じゃなく兄貴を選んだ。



たぶん、本当に些細なこと。

一緒に遊ぶ相手に兄貴を選んだとか、はたまた何かのプレゼントをあげる相手が、兄貴だったか。



覚えてないから、本当に重要じゃなかった。

だけどそのときに、俺ははっきり思った。



……嫌だ、って。

一緒にいるのも、なるみのいちばんなのも、俺じゃなきゃ嫌だって。



そう思ったのが、初恋のはじまり。

俺の独占欲の強さは、もはや幼少期からはじまっていると言ってもいい。




──5歳のとき。

弟のなるせが大きくなってきて、俺よりもなるせを優先する時間が増えると、俺の中でますますなるみを取られたくないって気持ちは大きくなって。



──8歳のとき。

なるみにとって俺が、王子様やヒーローみたいな存在だったらいいなって、思ってた。



──10歳のとき。

バレンタインの包装の違いを見て、本命は兄貴だったことを知った。



──12歳のとき。

なるみに頑張ってるところを見せたくて努力した全国統一の学力テストは、トップクラスの成績だった。努力しようって思ったのは、ここから。



だけど、13歳のとき。

なるみのストーカーの件と、そのあとのなるみの発言を俺が勘違いした件で、頑張るのはやめた。



「王子さま落ちてないかな」



16歳のとき。

それでもやっぱり、なるみのことが好きだった。