大して興味があるわけじゃないのに、なんとなく気分で買ってしまったティーン雑誌をぱらぱらとめくる。
その最中に聞こえた声を、「引いてみる?」と反芻した。
『なんだかんだ、なるちゃんは衣沙に構ってあげてるでしょ?
それを急にやめたら、衣沙も不安になって女の子と遊ぶどころじゃないと思うけど』
そりゃあ、衣沙が怖がってるのはわたしが離れていくことだから、不安がってくれるだろうけど。
それはあくまで「満月ちゃんを好きな自分を慰めてくれるなるみ」への気持ちであって、別にわたしを好きでいてくれているわけじゃない。
『あえて特定の男と関わるようにする、とかね』
「そんなことで好きになってくれるなら、とっくにやってるわよ。
ただでさえ、まわりに男ばっかりなんだから」
衣沙と違ってまじめなのに、なぜか霧夏の先代だった衣那くん。
当然彼らのことも知っていて、わたしの気持ちも知っている。
だから、いろんな意味でなんでも話せる相手だ。
『でも不思議じゃない?
こんなになるちゃん可愛いのに、霧夏の誰からも言い寄られてないんでしょ?もし俺が下っ端の立場だったら、衣沙のいないうちに狙うけど?』
「………」
衣沙が牽制してるんです、とは言えない。
その理由に満月ちゃんが関わっているから、衣那くんには絶対に言えない。
『ふふっ、衣沙を想ってるなるちゃんほど可愛い女の子っていないよね』
「やっぱりわたしのこと揶揄ってるでしょ?
それに、そんなこと言ったら、満月ちゃんに怒られるわよ」
『だいじょうぶ、
満月はそれ以上に別格でかわいいと思ってるから』
……どうして衣那くんはこんなにも一途なのに、あの男はフラフラしてるんだろう。
兄弟で同じ相手を好きになるのが大変なのはわかるけど、それにしてもひどい。



