ぽつり。

つぶやいて、急いで待ち合わせ場所の駅前に向かう。本当は衣沙が迎えに行くと言ってくれたのだけれど、今日はめずらしく待ち合わせにした。



というのも、わたしが「待ち合わせしたい」って言ったからで。

デートっぽいから、なんていうふざけた理由にも、付き合ってくれている彼。



「衣沙……! おまたせ!」



駅前にすぐ衣沙の姿を見つけて駆け寄れば。

すごく甘い瞳でわたしを見下ろして「おはよう」を言ってくれる。



「いつもより色っぽいじゃん。……かわいいよ」



「っ、」



くちびるには、衣沙がプレゼントしてくれたリップグロス。色が濃いめのそれはわたしからすれば若干の背伸びなんだけど、かわいいって褒めてくれる。

頬を撫でられて、まだ慣れない甘い雰囲気にそわそわした。




「もしかして結構待たせた……?」



「全然。なるみがどんな表情で俺んとこ来てくれんのかなって、俺もちょっと楽しみにしてた。

……たまには待ち合わせも悪くねえなって」



「もう……わたし焦った顔してたでしょ?」



「ううん。可愛くてどうしようかと思った」



っ、ちょっと甘すぎない……?

こんなに初っ端から「かわいい」って連呼されたら、ほんとにわたし心臓止まりそうなんだけど。デート前にはずかしくて挫けそうなんだけど。



「……やばい。

ごめんちょっといま、思ったより浮かれてんだよね」



とろけそうなほど、甘い笑み。

何か言われたわけでもないのに甘すぎるその笑みを見て、思わず顔が赤くなった。……っ、なにその表情!ずるい!