「なるせ、これで大丈夫? 変じゃない?」



「はいはい大丈夫。ばっちりかわいいよ」



リビングにいるなるせに向けて腕を広げて、チェックしてもらう。

なんだか投げやりに返された気がしなくもないけど、"かわいい"の言葉がもらえたから満足だ。



「じゃあ、いってきます」



時間を見て、ソファに置いてあったバッグを掴む。

家を出ようとしたら、「あ、姉ちゃん」とリビングから出てきたなるせがわたしを呼び止めた。



「なに?

ちょっと急がないと遅刻しそうなんだけど」



……まあわたしが悪いんだけどね。

衣沙に対して服装やら何やら気にしないと言ってたくせに、いざ付き合ってみたらめちゃくちゃ気にしてる自分がいる。




そんな衣沙と初デート、となれば。

さすがにわたしも弟に協力してもらって、服装ばっちりだ。……衣沙ってかっこいいし。わたしもちゃんと、かわいい彼女でいたい。



「デートするのはいいけど。

……あんま無防備になっちゃだめだよ」



「……? 無防備?」



「隙がありすぎると狙われるよ?ってこと。

まあ衣沙兄のことだからちゃんと考えてるだろうけど、気安く身体ゆるしちゃだめだよ」



リビングにいる両親に聞こえないようにか、わずかに声をひそめるなるせ。

彼の言いたいことがわかって思わず顔が赤く染まりそうになったけど、こくこくうなずいて「いってきます」と今度こそ家を出た。



……そんなことで心配されるなんて思わなかった。

でもなるせももう中学3年生の男の子だもんね。……衣沙も中学時代ずいぶん派手に遊んでたし、案外男の子って大人になるのが早いと思う。



「もう来てる、よね」