◆ 後日談



「で、俺も来てよかったわけ?

まあ、誘ってもらったからには俺もしっかり食べて帰るけど」



「いいよ、誘ったの俺だし。

なるせのときは彼女できたの祝ってなかったから、ついでにお祝いってことで」



「ぶっちゃけ一番おめでたいのは兄貴だけどな」



籍を入れるのは9月。

なんでも、満月ちゃんの名前の「満月」から連想して、今年の中秋の名月の日に籍を入れることにしたんだとか。



たぶん、俺より兄貴の方がロマンチスト。

……そもそも俺のロマンチスト気質は、なるみの好きな少女漫画に影響されてるからで。



「そういえばさ、夏休みどうすんの?

衣那兄もひなちゃんも、休み取れそう?」



網の上で肉を裏返しながら、兄貴を見るなるせ。

しかも兄貴は、提案したくせに「微妙」と一言。




何だよと思ったけど、そのあとに新婚旅行の休暇を取っているから、纏まって休みを取れないかもしれないらしい。

……まあそれは仕方ないな。



「っていうか……ひなちゃんって当たり前だけど、結婚したら苗字変わるじゃん。

姉ちゃんも衣沙兄と結婚したら目黒になるし、俺のまわりみんな目黒になるんだけど」



「ああ……っていうかその場合義理ふくめてみんな兄弟になるんじゃねえの?

満月ちゃんの兄貴が流兄なんだし、なるせはなるみの弟だし」



3家族とも親同士も仲良いから、さぞかし賑やかだろうな、親戚関係。

……うん、でも、いいな。結婚。



俺はまだ未成年だし、なるみと付き合ったばっかりだけど。

素直に、いつかなるみとそうなったらいいなって思う。



「……まあ、確かに楽しいとは思うけどね」



いまはまだまだ現役の中高生と社会人。

そんな俺らがアルコール片手にかわいい奥さんのことを惚気るのは、十数年後の、話である。