きっと不安そうな顔で待ってる。

一時的な感情の乱れなんて、あとあと笑い話になるだろ。……そんなんで、距離置いてられるかよ。



「じゃあ、帰るかな。

衣沙もはやく俺に帰ってほしいみたいだし」



「当たり前だろ。

汚すだけ汚して帰るってどんな神経してんだ」



意外と綺麗好きだからちゃんと片付けるけど。

……勝手に入られないように対策考えねえと。



「衣沙」



「はいはい、今度はなんだよ」



出ていこうとしたくせに俺を呼んだ兄貴と視線を合わせれば。

俺を揶揄っているときとは全然違う、綺麗な笑みで。




「ほんとによかったね。おめでとう」



「、」



予想もしていなかった言葉を差し出してくれる。

意外、なんて思ってしまったけど、よく考えたら根はこういう人だ。……元ヤンだけど。



「今度、ちゃんとしたプレゼントでもあげるよ。

希望が通るかはわかんないけど、欲しいもの一応言って?」



「んじゃ、高級焼肉食べ放題で」



「却……、

俺が満月と、ちゃんと仲直りできたらね」



絶対「却下」と言いかけたくせに、めずらしく通ったそれに、口角を上げながら。

たまには祝われんのも悪くないなと思った、とある日の放課後。



【衣沙くんアニバーサリー Fin.】