困った顔で、俺を見るなるせ。
どうやら弟としても、姉の危機感のなさには困っているらしい。誰よりも俺が困ってるけど。
「あー……うん、ごめん、ね?
でもほら、流くん今はもう実家にいないし」
……ああ、告白されたから、一応自分の危機感のなさには多少気づいたんだな。
だからといって自分の危機感のなさと男の本能的なものがイコールで結びついていることは、理解してないんだろうけど。
なるみの場合、そもそも男女どうこうっていうのを、ちゃんとわかってない気がする。
まあそれはそのとき……で、いいか。
「それよりなるせ、夕飯どうするの?」
「衣那兄このあと帰るんでしょ?
じゃあ俺も帰るよ。残っても仕方ないし」
「え、押しかけたくせに、
広げたお菓子やらクラッカーの残骸は放置?」
考えもせずにパーティー開封するから……
すげえ量じゃん。コレどうしろって言うんだよ。
「もうすこしいるなら、わたし先に帰るわよ?」
「んーん、一緒に帰る。
学校行事で挨拶することになったから、その原稿考えなきゃいけないの思い出した」
言いながら、立ち上がるなるせ。
せめて玄関まで見送ろうと思ったのに「見送りいいから」と断られて、部屋に取り残される。
……最悪なことに、兄貴と。
「……兄貴も帰れば?
満月ちゃん、夕飯つくって待ってんじゃねえの?」
基本的に、俺らは仲悪くねえけど、仲が良いかって聞かれたらそんなこともないと思う。
満月ちゃんとかなるみのこと以外で言葉を交わすこともない。



