ぴたっと。
なるせが動きを止めたかと思うと、勢い良く振り返った。それから、ばっと口をつぐむ。
「わたしと衣沙が何? なるせ」
「な、んで、姉ちゃんいんの……?」
「家帰ったら、なるせが衣沙の家行ったってお母さんが言うから。
おすそ分け持っていってなるせに晩ご飯どうするのか聞いてきてって頼まれて、」
「……俺の部屋入るときも言ってるけど、ノックしてよ。
衣沙兄が着替えてたりしたら困るでしょ」
「え、全然困んないけど」
……、うん。知ってたよ。
昔から一緒だからそういうことに抵抗ねえんだよな、なるみは。でも着替えてるときは女の子として恥らうべきだと思うよ、なるみ。
「衣沙兄、この危機感の無さ大丈夫?」
「大丈夫じゃない。
なるみ、一応部屋入るときはノックしようか」
「え、なるせと衣沙の部屋以外に入るときは、ちゃんとノックするけど。
わたしがノックしないのふたりの部屋だけだけど」
「待ってなるみ、誰の部屋に行ったの」
女友だち……?
でも、なるみって家に行くほど仲良くしてる女の子いねえよな? 一体誰の家に上がったんだよ。
「衣那くんの部屋入るときがあればノックするわよ?
あと満月ちゃんとか、流くんとか」
「衣那兄はともかく、
流兄は完全にアウトだと思うよ姉ちゃん……」



