「なるせ。とりあえず言い訳は聞いてやる」



「衣那兄が、

"協力してくれたら彼女とデートするためのお小遣いあげてもいいよ"って」



「見事に買収されてんじゃねえか」



中学生だからデート代に困るのもわかるけど。

彼女を条件にされたら思わず引き受けたくなるのもわかるけど。



その前にこの見た目はイケメンで常識人ぶってるけど実は中身アレなんじゃ?な、バカ兄貴を止めようとしてくれ。

……あとが怖いから、直接「バカ」って言う勇気は俺にもないけど。



「……で、お祝いって一体なに?」



というか、今日は平日だ。

なるせは……制服着てるから、帰りに来たとして。なんで兄貴は実家にいんの?この人有給?まさか有給使ってわざわざ俺のこと祝いに来てんの?




テーブルの上に、わっさーと広げられているお菓子。

文句を言っても無駄だと気づいて床に座り、渡されたペットボトルのジュースを開封する。



深く考えたわけでもなく、

ただ単にジュースを飲もうと口をつけて。



「なるみにもう手出したの?」



「ッ、げほ、」



噴き出さなかった俺を誰か褒めてほしい。



ちょ、ほんとに何しにきたんだこいつ……!

なるせがすげえ困った顔してんじゃねえか……!俺も困るけど、姉の生々しい話を聞かされるお前も十分困るわな……!



「っ、俺のことなんだと思ってんだよ!?

まだ付き合って数日! す・う・じ・つ!」