一生のうち、予想できない出来事っていうのは、そりゃあもう数えられないほど起こる。

些細なことから大きなことまで、山ほど。



つい数日前のことだってそうだ。

なるみに「好き」って言われる日が来るなんて、夢にも思っていなかった。……そして。



「おかえり衣沙」



「………」



自室の扉を開けたらいきなりクラッカーを頭からかぶるハメになるのも、予想していなかった。

なにこれ。……うっわ、すげえ火薬の匂い。



「人の部屋で何してんの?」



ひらひらの紙テープを回収してゴミ箱に押し込み、窓を開ける。

振り返れば、俺の部屋に我が物顔で居座っている兄貴と、なるせの姿。




「なにしてんのって、

衣沙の帰りを待ってた以外になにがあるの?」



「兄貴がなるみだったら笑顔で許すけど、

兄貴は兄貴でなるせはなるせだから許せない」



っていうかマジで何しにきてんのこの人。

結婚前のくせに満月ちゃんとの愛の巣に帰らないで何してんのこの人。最近実家来すぎだろ。



「冷たいなぁ。

わざわざお兄ちゃんが祝いに来てあげたのに」



「俺誕生日でもなんでもないけど」



「なるみと付き合えたお祝いに来たんだよ?」



……なにそのありがた迷惑すぎるお祝い。