心底言いづらそうな顔をした衣沙は、わたしのことを見下ろして。
それから「あのとき」と、ゆっくり口を開く。
「なるみのトラウマ考えて、
男が近寄ってこないように、なるみのことをトップっていう扱いにしようと思ってて……」
その話は知ってる……って、そうか。
ニナくんが見かねてこっそり教えてくれたから、衣沙はわたしがそれを知っていることを知らないのか。
「それをいち早く浸透させるのに、呼ばせた。
……っていうのが、まずひとつ」
「え、ほかにも理由あるの?」
「……あるよ」
衣沙が、もごもごと口ごもる。
そんな顔をされたら余計気になって、「どんな理由?」なんて聞いたわたしを。
「これはあくまで俺の勝手な独占欲で……
『姐さん』って呼んでる女の子のこと、わざわざほら、恋愛対象に見ないかな、って、いう……」
衣沙は、一瞬にして赤面させた。
……っ、なにその理由! 恥ずかしいんだけど!
「考え方が子ども……」
「っ、うるさい。
俺だって幼稚だとは思ったけど仕方ねえじゃん、なるみのこと誰にも取られたくなかったんだから」
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
でも、ひとつ言えることは。
「そんなことしなくても、
ずっと衣沙のことだけ好きでいるのに……」
「な、っ……ああもう、マジでお前ずるい」