鮮やかに空を彩った花火はすごく綺麗で。

綺麗だったけど、半分くらい見てない気がする。……隣の色男に、目とくちびるを奪われすぎて。



「ふは。ほんとにいっぱい買い物したね」



「……だって屋台好きなんだもん」



わたしの手にある袋には、焼きそばにりんご飴にベビーカステラにわたあめに……と。

わたしの屋台でのはしゃぎっぷりが分かるラインナップが詰まってる。



ぜんぶ食べられないと思うから、衣沙に手伝ってもらうつもりだけど。

持って帰れないからって、さっきその場で食べたクレープも美味しかった。



「……そういえば」



衣那くんたちに連絡を入れて、直接ホテルに帰る途中。

とあることを思い出して、手を繋いだ幼なじみ……いや、彼氏のことを見上げるわたし。




「ん? どしたの?」



「結局あれってなんだったの?

ほら、衣沙がわたしのこと『姐さん』って呼ぶようにみんなに仕向けてた理由」



ただ単に揶揄ってるだけだと思ってたんだけど。

わたしのことを心底大事にしてくれてる衣沙が、そんなことをする理由なんてないし。



「……それ聞く?」



ちょっと嫌そうな顔をしてるから、何か別の理由があるんだってことはわかった。

……下の子たちにわざわざわたしを『姐さん』って呼ばせる理由?



「わたしへの嫌味?」



「違うよ。

……まあ、なんていうか、」