昨日、って……



「始業式のあとに、

空き教室に呼び出したあれ……?」



「そ〜。

……まあ結局、なるちゃんが傷つくと思ったから言えなかったけど」



「………」



じゃあ最後に、"やっぱいい"って言ったのは、この事だったってこと?

ふざけて「大事な話がある」なんて言ったんだと思ってたのに、本当に大事な話だったの?



「なにそれ……」



普段は何もかもいい加減なくせに、どうしてそんなときだけ"なるちゃんが傷つくと思った"なんて気を遣ったりするの。

……どうして、ひとりで抱えてるのよ。




「……言わなかったから、怒ってる?」



じっと、衣沙がわたしを見つめる。

その瞳が不安げに揺らいで、決して揶揄っているわけではないことは、すぐにわかった。



「怒ってる」



「……ごめん。

でもさっきも言ったけど、なるちゃんが、」



「そうやって気を遣って黙ってたことに怒ってる。

……衣沙が傷ついたときはわたしが慰めるし、わたしが傷ついたときは衣沙が慰めてくれるんでしょ?」



いままでだって、ずっとそうだったのに。

どうして気を遣うんだと眉間を寄せれば衣沙はぱちぱちと何度か瞬いてから、無言でわたしを抱き締めた。



「……なら、慰めて」