「もうすぐ花火上がる時間だな」



学校で"うらやましい"って言われることが増えた。

一途になったら衣沙くん実はいい彼氏だよね、ってみんなは笑ってたけど、本当にその通りだと思う。



「あとでりんご飴買いに行こ。

ほかにも欲しいもんあるなら、痛み落ち着いてからゆっくり買えばいいし」



「……うん」



「わがままいっぱい言っていいよ。

……ぜんぶ俺がなんとかしてやるから」



「……じゃあ、ずっと、いっしょにいて」



衣沙の手を握る。

ちょっとおどろいたような顔をした衣沙が、わたしを見て、やわらかく笑ってくれた。




「俺のわがままも同じだから、叶えて」



「……うん」



「好きだよ。なるみのことだけずっと想ってる」



「……うん」



甘い甘い視線と言葉に、溶けそうになる。

時間になれば花火が打ち上げられて、目を奪われるようにみんなが空を見上げる中で。



「言い慣れてないからさすがに恥ずいけど……

愛してるよ、なるみ」



隠れるように、衣沙が甘いキスをくれた。