「……そういや俺、今回の旅行のプラン詳しく知らねえんだけど。
今日は1日このまま海で遊ぶ予定?」
「ううん、15時過ぎに引き上げるよ。
そのあとシャワー浴びて、花火大会行く予定だから」
「え、花火やんの?」
「運良くかぶってたの。
だから、わたしが"花火行きたい"って」
「なるちゃん知ってたなら教えて……?」
まあ聞かずに任せっきりにしてた俺が悪いんだけど。
花火か。……ほんとに海と花火両方おなじ日に楽しめる感じだな。しかも手持ちじゃなくて打ち上げ。
なるみのテンションも回復してきたし。
花火を見る頃には、はしゃいでると思う。……こういう見た目だけど、なるみはたまに子どもっぽいとこあるし。
「そうそう。衣沙、なるみが好きな少女漫画あるでしょ?
あの少女漫画、結ばれない方の男の子の名前が偶然『いさ』らしいよ。名前じゃなくて名字の方だけど」
「な……っ、んで、知って、」
「最近満月が少女漫画ハマってて。
この間読んでたやつがなるみの好きな漫画で、何気なくキャラ説明見てみたらそうだったから」
兄貴の言葉に顔を上げて、顔を赤くしてるなるみ。
ん? 結ばれないキャラが『いさ』なの?
『わたしは報われない方を好きになるタイプよ』と。
いつぞやの、少女漫画についての会話を思い出す。……報われない方を好きになるタイプ、ねえ。
「なるみ俺のことすげえ好きじゃん」
好きな少女漫画の報われない方で、しかも名前が『いさ』って。
ほんと。……かわいいことしてくれるよ、俺のお姫様は。



