「お。なるみちゃーんっ、なるせくーんっ」



ひらひらと。

満面の笑みを浮かべた満月ちゃんが、こちらに歩み寄ってくるふたりに向かって手を振ってみせる。



……あんまり似てないから、美男美女のカップルみたいだな。

っていうか、素晴らしく絵になる姉弟。なるみの白いワンピースが夏の青空に映えて綺麗だ。



「満月ちゃん! 

なにげに、会うのひさしぶりだよね?」



「そうだねー。おはよぉ」



駆け寄ってきたなるみと、笑顔で会話する満月ちゃん。

そのあと、なるせが連れてきた彼女と「はじめまして」の挨拶をするのを見ながら、俺もすぐそばにいるなるみに「おはよう」を言った。



──前に約束していた、夏休みのトリプルデート。

満月ちゃんと兄貴の仕事の関係で、結局、期間は見事にお盆休みとかぶった。




「おはよう、衣沙。

なるせの彼女、めちゃくちゃ可愛いでしょ?」



生徒会の副会長なんだって、と。

補足するなるみに、「へえ」とつぶやいて返す。



「……? なんか反応うすいね?」



「ここで俺が「え、そうなの?」とか食いついたら絶対なるみが妬くじゃん。

……あと、俺の中でいちばんかわいいのはなるみだから、可愛いとか言われてもわかんないよ」



一般的に見てかわいい女の子だな、とは思うけど。

俺の中で言ってしまえば、なるみが世界一かわいい。



「メイクしてきたんだ?」



チークとは別の意味で赤く色づいてるなるみの頬を、指で撫でる。

誕生日にリップグロスをプレゼントして、どうやら女心とやらに火をつけてしまったらしい。