顔がきっと真っ赤になってるんだろうなって思いながら、目を閉じる。
リップグロスの話なんて完全に忘れて、ただ衣沙がくれる甘いキスに溺れそうになっていたら。
「ただ、い……ま」
扉が、開いた。
……え? 開いた?
いまわたしは彼の首裏に腕を回して、目を閉じて、完全に身をゆだねてる状態、で。
「百歩譲ってリビングは許すけど、
さすがに玄関は勘弁してくんないかな……」
「っ……!」
ばっ!と。勢い良く衣沙から離れて、そのまま逃げるようにして彼の後ろに隠れる。
え、うそ、見られた!? なるせに!?
「おかえり。
ほんとは見送って帰るつもりだったんだけどねえ。なるみが、ちょっと寂しそうだったから?」
「にやにやしないで。
う、っわ。なにその玄関に広がってる荷物」
「ああ、なるみの誕生日プレゼント。
お菓子とか結構入ってるっぽいからなるせもあとで分けてもらえよ〜」
ちょっ、なんでこのふたりは普通に会話してるの!?
え、男同士ってこういう気まずいシーンを見ても普通に会話できるものなの!?
「なるちゃん、俺そろそろ帰るわ〜。
また今度、改めてちゃんとデートしような」
真っ赤になってるわたしの顔を、振り返って覗き込んでくる衣沙。
うなずいたら、本当にそのままあっさり帰ってしまって。
衣沙が残していったキスの感触に、思考を奪われそうになりながら。
「ほんと勘弁してよ」ってなるせのつぶやきに、心の中で激しく同意することしかできなかった。……ほんと、勘弁、してください。