みんなの視線が、さおに集められる。

おそるおそる口を開いた彼が何を言うのかと思えば、はじめくんに向かって「お兄さんいますよね?」と一言。



……お兄さん?



「うん、いるよ」



「………」



「うちの兄が、どうかした?」



不思議そうに、首をかしげる彼はじめくん。

ごもっともな反応だと思う。お花見のときもはじめくんはいなかったし、そのあとわたしと衣沙がそれぞれファミレスで会っただけで、さおは彼のことを知らない。



つまり、初対面のはずだけど。




「俺も聞いた話で詳しく知らなくて、あくまで顔写真を見たことがあるってだけですけど……

姐さんのトラウマの件で、」



ドクッと、心臓が、大きく揺れる。



「姐さんにストーカーしてた"先輩"って、」



「っ、さお、もう言わなくていい」



とっさに出た声が大きくて、まわりのみんなが驚いたような顔をする。

特に衣沙の腕の中にいた舞ちゃんが、びくっと肩を跳ねさせたのを見た。



「言わなくていい……余計なこと言わないで」



さおの言葉の途中で、彼の言いたいことにはすぐに気づいた。

衣沙が未だに理解できないって顔をしてるけど、彼も言葉の意味はちゃんと理解してるはずだ。