「あのー……なるみさん?」



「………」



「え、怒ってる? もしかして怒ってる?

舞ちゃんを抱っこしたのも浮気にカウント?」



「いや、別にそんなつもりで見てたわけじゃないけど。

わたし小さい子に妬くほど心狭くないから」



……なんだ。妬いてくれてねえのかよ。

ああでも、なるみに拗ねたように「妬いた」って言われたら俺の心臓たぶん止まる。なるみがあまりにもかわいすぎて。



「うまくいってよかったねー」



にこにこと。

笑ってそう言ってくれる懍。「さんきゅー」なんて俺も笑みを浮かべて返していたら、突然ツキが「衣沙さん」と俺を呼んだ。




「ん? なに?」



「なにって……

あの、彼。 えっと、髪がグレーの、」



「……? はじめくん?」



花丘(はなおか)はじめ。

冬霞の幹部のひとりで、ツキの言う通りグレーの髪。ツキだって髪色が髪色だから別にめずらしいことじゃないのに、なぜかなにか言いたげな顔をしていて。



「どしたの? さお」



同じように情況を把握できていないらしいなるみが、尋ねれば。

ツキは、すこし苦々しく眉間を寄せた。



「あの……」