あーもう。かわいいな。
そんな顔されたらもっかいキスしたくなるけど……さすがに怒られそうだからやめておこう。
「あんまりいじめないであげてくださいね」
「あんなの、いじめたうちに入らねえよ」
あきれたような顔で俺を見るツキに、そう返して。
「どうぞ」って渡されたコーヒーを飲んでたら、ふいになるみが俺の元に駆け寄ってくる。手には紙皿。その上に切り分けたばかりのケーキ。
「走ったら落とすぞ」
「わたしのこと何歳の子どもだと思ってるの」
むっとくちびるを尖らせて、なるみは俺のすぐ隣に腰掛ける。
おとなしくケーキを食べるのかと思ったら、彼女はひとくち分のケーキを「あーん」と俺に差し出してきた。
「……主役がいちばんに食べなくてどうすんの」
「いいから。ほら」
「ほらって……」
こういうところ、なるみはやたらと頑固だ。
それを知ってるから差し出されたのを食べたら、なるみは「美味しい?」って首をかしげる。……絶対立場が逆なんだよな。
「美味いよ」
「ふふっ。だって」
……"だって"?



