……って、言ってたはずなんだけど。
「姐さんお誕生日おめでとうございまーす」
「わ、ありがとう。
これ全部たべられるの? えっ、すごい」
なんでいつもいつも俺は不憫なわけ……?
「誕生日」とは言わずにデートに誘ったとき、なるみさん「うん」って嬉しそうにうなずいてたよね? デートの約束したはずだよね?
「どんまいです、衣沙さん」
「ツキ、
俺はいまこの状況を理解できずに苦しんでる」
この間ツキにもらったクーポンがあるから、パフェ食べに行こうねって話もしてたんだよ。
なのになんで俺は今、霧夏のたまり場にいるのか。
「え、だから、簡単じゃないですか。
朝、衣沙さんが姐さんを迎えに行くより先に、俺らが姐さんを迎えに、」
「思いっきり邪魔してんじゃねえか!
しかもお前も一緒に行ったのかよ……!」
俺がふたりで過ごそうとしてたの知ってたじゃん。
なに邪魔してくれてるんだコイツ。……なるみもなるみで、うれしそうな顔して笑ってるけどさ。
「え、姉ちゃん?
さっき出掛けたよ? あの、ほら……なんだっけ、衣沙兄が入ってるチームの人達が迎えにきて、」
家に迎えに行ったらなるせにそう言われたときの俺の気持ちを考えてほしい。
……はいはい、まあ知ってたよ。
どうせ楽しみにしてたのは俺だけだよ。
今まで何度もふたりで出かけたけど、付き合ってからのデートははじめてだからって色々考えてたのは俺だけだよ。
浮かれた気持ちもさすがに沈んで冷静になるわ。



