「……あ」



1時間目。

どうやらなるみは授業に出る……というかそれが普通なんだけど、俺は特に考えたわけでもなく、ただサボろうと休み時間に教室を抜け出して。



空き教室に向かう途中。



「ちょっ、逃げんな……!」



「嫌です」



「はあ!?」



ばったり出くわし、俺を見た瞬間に踵を返して逃げたのはツキで。

逃げられたら何としてでも捕まえねえと気が済まないんだよ……!っつうか足速いな……!




ばたばたと、空き教室のある廊下を駆ける。

っ、何が楽しくて男同士で全力の鬼ごっこしなきゃなんねえんだよ。色気もなんもねえわ。



「待てって……!」



「嫌です待ちません」



「赦してはないけど、

べつに怒ってるわけじゃねえから……!」



なるみから、あの告白が嘘だったことを俺に伝えたのを聞いていたのか。

逃げたみたいだけど、別に怒ってるわけじゃない。それを伝えればツキはようやくスピードをゆるめて、最終的には止まってくれた。



「はあっ、お前な……」



「運動不足ですね衣沙さん」