「まあ、なるみが行きたくないなら無理に連れて行こうとは思わないけど。
……俺がデートしたいから、付き合って」
「、」
学校について校舎に入ってから、なるみのことをぎゅーっと抱きしめる。
まわりの視線を気にしたようで焦った顔をしていたけど、「それでもやだ?」って俺の問いかけには、ちゃんと首を横に振ってくれた。
「いやじゃない……」
「ならよかった。楽しみだね、デート」
「……、う、ん」
付き合う前はなるみの気持ちが俺に向いてるなんて微塵も思ってなかったから、考えがまわらなかったけど。
いまは不思議とよくわかる。長年の付き合いもあるし、なるみが求めてる言葉を言ってあげられる。
「お。噂のお騒がせカップル登場じゃん」
「おはよー、なるちゃーん」
「休み明けたらまたラブラブに戻ってんじゃねーかよ。
くっそ、こないだギスギスしてたから今度こそ"休み中に別れる"に賭けてたのに」
「お前今日の昼飯奢りなー」
「お前ら人の不幸に賭けてんじゃねえよ。
あと俺別れる気ないって言ってんだろ」
なるみを解放して教室に向かえば、至るところからかけられる声。
先週はキスの一件でギスギスしてたからまた不穏なウワサが流れてたのは知ってるけど、俺の不幸に賭けるな。
お互いに好きだって言い合ったから、もう別れる気なんてこれっぽっちも無いし。
絡めた指の淡い熱さえ、もう、離したくない。



