「ねえ、勢川さん」



「ハイハイなんですか粟田さん」



「……わたしとキスできる?」



ぴたり。

動きが止まったかと思うと、今度ははあっと潔すぎるほどに大きいため息をつくニナくん。



「お前さ、マジでそういうの良くねーと思う。

俺だからいいけど、男に軽々しく聞くなよ」



「……その心は?」



「勘違いされっから。

お前一応美人なんだし、男は遠まわしな発言を勝手に意味深にとらえたりすんだよ。わざと意味深に言うならまだしも、その気がないならやめとけ」




……へえ。そういうものなのか。

まあでも、女の子も、好きな人の一言で一喜一憂するんだから、その気持ちはわからなくもない。



「あ、そういえばいまさらっと言ったけど。

わたしのこと美人だと思ってくれてるのよね?ありがとうニナくん」



「お前たまにうざい時あるよな」



「うん、なるせ……弟にも言われる」



「せめてなおす努力をしろよ」



衣沙ともよくこういうやり取りをしてたような気がする。

そういう、何でもない会話が好きだったんだけど。



2年になってから、なんとなく、ギクシャクしてることが多い。

……あ、ちがう。あれだ、衣那くんが結婚するって話が出た後からだ。