「衣沙……」



「……ん?」



なるみがしばらく泣きじゃくっているうちに、チャイムが鳴って昼休みは終了。

それでもお互いにここを離れる気はなくて、ずっとなるみの背中をさすっていた。



「ちょっとだけ、ぎゅって、して……」



「………」



なにそのかわいいおねだり。

俺、キスしてなるみのこと泣かせたんだけど。



言われたら断る理由もなくてぎゅっと抱きしめると、なるみの腕も背中に回る。

落ち着かない鼓動を、俺が気にしていれば。




「ちょっと、かがんで」



また次のおねだりをされて、謎に一拍置いてから、なるみの言うとおりにすぐそばで視線を合わせる。

腕の力が全然ゆるまないから、抱きしめ合ったままの至近距離。正直、とてつもなく心臓に悪い。



次は何をどうして欲しいんだと、なるみの瞳を覗き込む。

光の差し込み具合で綺麗な瞳が色彩をわずかに変えるのを、じっと見つめて。──動けなかった。



「これで……おあいこ、でしょ?」



困ったように笑う彼女。

くちびるに与えられたその感触なら、誰よりも俺が知っていて。



動けない俺からあっさり腕をほどいたなるみが、「空き教室行こう」って先に歩き出すけれど。

その背中を視線で追いながら、一瞬にして全身の体温が上がったのを感じた。



……あの、なるみさん?

いまとんでもない爆弾、落とした、よ?