「……だれがだれに?」



「俺が、なるみに」



「………」



ぽかんと、してるなるみ。

状況がわかっていないのか、しばらく黙りこんだなるみは。ちょっと潤んだ瞳で、俺を見上げて。



「ごめん、もう一回言ってもらっていい?」



……ああ、うん。そんな反応になるわな。

俺だってたぶんなるみから「衣沙にキスした」って言われたらそういう反応すると思う。



その曖昧な表情を見ていたら、ますます罪悪感が増す。

そっと手を伸ばして頬を撫でたら、凝りもせずに触れたくなって、一度だけまぶたを伏せた。




「俺がなるみにキスした。

……いーよ、なるみに怒られる覚悟はしてる」



殴ってくれてもいいよ、と。

ほんの微笑程度に笑ってみせれば、なるみは俺を見上げたままフリーズした。



それから。



「っ……」



一瞬にして、真っ赤になった頬。

怒りから来たものじゃなく羞恥で染まったそれを見つめていれば、なるみの瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。……ほら、泣かせた。



「な、んで……」



俺の服を小さく握って、つぶやくなるみ。

「ごめん」と謝れば首を横に振ってくれたけど、許してもらえるなんて思ってない。