「っ……!」
ばっと、机に顔を伏せる。
やばいやばいやばい。俺が自分でなるみのファーストキス奪っちゃってんじゃん……!
あんなに、なるみが、大事にしてたのに。
なるみが、キスされてたとしたら俺に泣きついてたって言ってんのに。……その俺が、なるみのファーストキス奪ったって、笑えねえじゃん。
ほかの誰も触れてないって安堵よりも。
なるみの一番が俺ってことよりも。
何よりも湧き上がってくるのは焦りで。
「……なるみ、ちょっといい?」
ゆっくり顔を上げて、なるみを呼ぶ。
いまさら教室中の視線を浴びていたことを思い出したけど、そんなのどうだってよくて。
「落ち着いて、聞いてくれる?」
教室からなるみを連れ出し、まわりに人のいない廊下まで連れてきて。
まっすぐになるみを見つめれば、何も知らない彼女は不思議そうに首をかしげるだけ。
泣かせるかも、しれない。
……っていうか、間違いなく泣かせる。
「流兄が、なるみにキスしたってなるせから聞いた。……たぶんあいつの嘘だと思うけど。
ごめん、俺全然それ疑ってなくてさ」
「……? うん」
「なるみが流兄とご飯行った日。
あのあとなるみの家行ったんだけど、思わずっていうか……その、キス、した」
もう隠したって仕方ない。
何も無いのに避けてたなんて言えないし、なるみが大事にしてたファーストキスを奪っておいて、黙ってようなんて無理な話だ。