朝は「ちょっと今日調子悪いから先行ってて」やら、「ごめん寝坊したから先行って良いよ」やら。
放課後は「寄りたいとこあるから」だったり、「男連中で飯行くから今日はごめんな」だったり。
苦しい言い訳を重ねることで、なるみと別々の登下校をはじめて数日。
俺が一方的になるみを避けてるから、なるみは何かしら勘づいているのか、近づいてこようとしない。
おかげで。俺の精神ゲージはある意味限界です。
……圧倒的ななるみ不足だ。
「お前なんかやらかしたの?
粟田と別れたって噂どんどん流れてんだけど」
「やっぱ喧嘩した?」
いっそ喧嘩の方がマシだった。
こういう時に寄ってきそうなツキがまったく姿を見せないことに違和感はあったけど、それはさておき。喧嘩なら謝れば済むのに、そういうわけにはいかないのが俺の今回の行動なわけで。
昼休み。
賑やかな教室の中で、どうしようかと、女子に囲まれてるなるみを盗み見る。
空き教室には、行ってない。
間違いなくふたりきりになる場所は、徹底的に避けてる。……だって言い訳できないし。
なんて思っていたら、不意に女子の集団がなるみに何か言っているのが見えて。
どうかしたの?と、油断していたのが悪かった。
「衣沙」
「………」
そろりと近寄ってきた彼女のために、男連中があっさりと俺のそばを空ける。
……女子に「いい加減話でもしろ」って送り出されたんだろう。
「怒ってる、わよ、ね……?」
「……は?」



