……なんて、答えが出るわけもなく。
翌朝、なるせに宣言した通り、ひとりでいつもよりはやく登校した。速攻で男連中に「フラれた?え?目黒フラれたの?」とイジられたけどスルー。
そのうちいつもの時間になって登校してきたなるみは、「おはよう」をまわりに告げたあと。
おもむろに、俺のもとへと歩み寄ってくる。
「……おはよう。衣沙」
「……おはよ」
……直視できない。
事情が事情だから不自然に視線をそらす俺を、なるみはじっと見つめてくる。それからなにか言いかけたのはわかったけれど、結局何も言わずに去って行ってしまった。
「え? は? 喧嘩してんの?」
驚いたような顔で見られて、首を横に振って誤魔化す。喧嘩したわけじゃない。
……正確には、俺が、悪いんだけど。
「……あのさぁ」
「ん?」
「自分の好きな女をほかの男が狙ってたらどうする?
……ああ、付き合ってないとして」
ぽつり。俺の相談に、「粟田なんて年中狙われてんじゃん」とケラケラ笑う男連中。
笑えねえから。本気で悩んでんだからこれ。
「まあ相手にもよるけど……
取られんなら先に奪った方が賢くね?」
「それでフラれたら意味ねーけどな」
……そこ、なんだよな。
フラれたらぜんぶ終わる。それこそ、俺がいろいろなものに隠してきたなるみへの気持ちが、本人に伝わってしまうわけだし。



