「あれ、衣沙兄」



「……なるせ」



部屋を出れば、風呂から上がってきたらしいなるせとばったり出くわした。

姉ちゃんは?と聞かれて、「寝てた」とだけ返す。当然、キスのことは何も言わない。



「……そっか」



「ごめん。

俺、明日先に学校行くから伝言しといて」



「一緒に行かないの?」



「……頭ん中、整理したいから」




色んなことがありすぎて、頭の中がまだ整理できてない。

ごめんともう一度謝れば、なるせはふるふると首を横に振った。



「全然いいよ。……俺こそ、ごめん。

衣沙兄のために、ちゃんと動けなくて」



「んーん。仕方ねえじゃん」



しょぼんと落ち込んでるなるせの頭を撫でて、「気にしなくていいから」となだめる。

なにが「はぁい」だよ、なるみの馬鹿。なんもわかってねえじゃん。何をわかって返事したんだよ。



「んじゃ、またな。おやすみ」



「うん。……おやすみ」



まだ納得できてなさそうな表情だったけど、なるせは素直にそう言って見送ってくれる。

なるみの両親に「お邪魔しました」だけ言って、家に帰ったけど。……どうすればいいの?俺。