車がファミレスに向けて動き出したのを見計らって、スマホを取り出す。
お母さんに『流くんとご飯行くから、なるせもわたしも夕飯いらないです』と連絡してみれば。
すぐに『なるせちゃんから聞いてるよ』とかえってきた。
さすがなるせ。さすがはしっかり者。すでに連絡を入れてくれていたらしい。自慢の弟だ。
「なるせ。連絡しておいてくれてありがとう」
「ん? んー」
なるせがいま隣にいたらわしゃわしゃと頭を撫でてあげているところだけど、彼は後部座席に座っているから、残念ながらそれはできない。
流くんは大型犬のイメージだけど、なるせはポメラニアンっぽい。かわいい。
衣沙は……なんだろう。
綺麗な顔をしてるし色気もあるから、どちらかといえば気品のある猫の方が似合うような気もする。
ロシアンブルー、とか……?
勝手なイメージだけど、落ち着きのある風貌が似合う気がする。
なんてぼんやりしていたら、あっという間にファミレスに到着してしまった。
といっても、休日だからか混んでいて、駐車場もいっぱい。どうにも停められる場所がなさそうで、一度通り過ぎてから、近くのコンビニで降ろしてもらった。
わたしは行かないんだけど、とりついだのはわたしだし。
顔だけ合わせてからもどってこようと、衣沙と車を降りる。
流くんとなるせがコンビニでどうやらお菓子でも買うらしく。
その間にはやく行ってしまおうと、ファミレスに向かう途中で。
「衣沙?」
ふいに、衣沙が足を止める。
まわりに人はいなくて、ふたりきりで世界に置き去りにされたように感じて。つっと胸の奥が引き攣るような感覚を覚えたのも、ほんの一瞬。
「……!?」
ぐっと腕を引かれて、すぐそばの壁に身体を押さえつけられる。
っ、いやいや、なにしてるの……!?



