「……俺たまに衣沙兄のこと不憫だなって思う」



「へ? なんで……?」



「姉ちゃんがあまりにも鈍感だから。

……逆に女子にだってあるんじゃないの?そんな風に思われたいとき」



「え、男らしいって思われたい時?」



「違うよばか。女の子らしいって思われたい時」



ああ、逆ってそっちか。

女の子らしいって思われたいとき……



思われたい、とき、ね。

……じっと、なるせのことを見上げた。




「……特にないんだけど」



「ほんと衣沙兄が可哀想……

衣沙兄と出掛けるってなったら、服装気遣ったりとかしないの?」



「だってわたしと衣沙でしょ?

そんなことに気を遣う仲じゃないもの」



「ああもういいわかった……

もうさっさとどっちか告ればいいのに……」



なんか言った?と。

たずねる前に「衣沙兄」と衣沙の隣に行ってしまったなるせ。……何が言いたかったんだろう。



「約束してんのって、どこのファミレス?」



結局それを聞く機会もなく、駐車場にもどって、車に乗ったあと。

流くんに身振り手振りで場所を伝えると、すぐにわかってくれた。……あ、お母さんに流くんとご飯行くから夕飯いらないって言わないと。