「衣沙が飯行くって話。
なるみ行かないなら、俺と飯行かない?」
「え、どうしよう。
行くとも行かないとも言ってないんだけど……」
わたしが連絡をとりついだのに行かないってマズい?
いやでも、一応顔見知りの相手だし、待ち合わせ場所と時間を把握してるから何かあるってことはないだろうし。
流くんとのご飯は、正直すごく魅力的だ。
だってなかなか会えないし、連絡もほとんど取ってなかったし。
「衣沙、今日ひとりで行ける?
わたしが流くんとご飯行っても平気?」
くるりと、衣沙を振り返る。
そうすれば彼は、すこしだけ眉間を寄せた。
何その表情。怖いんだけど。
……っていうか今日、すごい機嫌悪くない?わたし衣沙に何かしたっけ?
「……俺のこと放って流兄と飯行くんだ?」
「え、あ、そうよね。
衣沙も流くんと一緒にご飯行きたいわよね」
「そっちじゃねえよ馬鹿……」
それなら別の機会に……
でも流くんがこっちにいる機会なんて滅多にないし、今日もこの用事が済んだらお仕事のためにまたもどっちゃうみたいだし。
「約束したなら仕方ないよ、衣沙兄。
流兄、それ俺も一緒に行っていい?」
「当たり前だろー?
んじゃあ、なるみとなるせ一緒に飯行こうな」
にっこり笑った流くんの言葉に衣沙は何も言わなかったから、納得してくれたらしい。
うん。つぎに流くんが来たときには、衣沙も一緒にご飯に行こう。



