ちらり、思わずミラー越しに衣沙を見る。

目を閉じているけれど相変わらず整った顔。綺麗なそれは危うげな色気を纏って、女の子を魅了する。



視線を感じたらしい彼がまぶたを持ち上げるとばっちり目が合ってしまい、どきりと鼓動が跳ねた。

……っ、見慣れてもどきどきするからずるい!



「衣沙、今日このあと空いてる?」



「このあと……?

別に何も予定ないけど、なに、俺に用事?」



「舞ちゃんってわかる……?

お花見で迷子になってた女の子……あの子がどうしても衣沙に会いたいんだって」



王子さま発言はさておき。

聞いてみれば衣沙はなにか考える素振りを見せてから、「俺もう女の子と遊ぶ気ないんだけど」と一言。



……舞ちゃんってまだ幼稚園に通ってそうな女の子なんだけど。

遊ぶどうこうとか、間違いなく関係ないんですけど。




「……さすがに夕方まで選ぶのかかんないだろうし。

かかったとしても最悪、細かいとこは3人で決めてくれていいし。べつにいーよ」



「ん。……夕方からなら、大丈夫みたい」



電話の向こうにそう伝えれば、『まじ?』とかえってくる。

声を掛けておいてなんだけど、どうやら断られると思っていたらしい。



さくさくと予定が決まって、じゃあ夕飯ついでに18時にこの間のファミレス、と約束を交わす。

電話が終わってから衣沙にもそれを伝えて、時計を見やった。



いまは13時すぎ。

さすがに18時までには、お祝いの品を選べると思う。……結局何にするか決めてないけど。



「さっきのって、なるみも行く?」



百貨店のすぐそばにあるパーキングに車を停めて、百貨店に入る途中で。

そう尋ねてきた流くんに、「さっきの?」と聞き返す。