『あ、もしもーし。俺ー』



「オレオレ詐欺はご遠慮願えますか」



『ちっげーよ。勢川ニナ。

もしかして連絡先登録してくれてねーの?』



「いや、ちゃんとわかってたけどノッてみただけよ」



『お前結構ノリいいよな』



それはどうも……じゃなくて。

初っ端からこんな会話をしてたら、本題に進めなくなる。ふっと息をついて「何かあったの?」と問えば、彼は『大したことじゃねーんだけど』と前置きした。



……え、東の関係者が「大したことじゃないけど」西に連絡してきてもいいの?

いや、因縁的なものがあるとか言う割には何もないから、仲良くしちゃってるけども。




『舞いるだろ? あのー……緋雨の妹の』



「ああ、うん。

舞ちゃんがどうかしたの?」



『すげえ駄々こねてんだよな……』



「……?」



『会いたいんだと。

……お前の、なんだっけ、幼なじみ?』



……え、会いたいってそっち?

わたしに会いたいと思ってくれてるのかなって一瞬期待したのに、衣沙に会いたいの!?



『なんか、王子さまって言い始めたんだとー。

……わがまま言って泣いてるから、緋雨もどうしようもなくて困ってんだよ』