「なるせに先越された……」



「え、落ち込むのそこなの?

じゃあもう姉ちゃんも彼氏作ればいいじゃん」



「………」



べつに彼氏がほしいわけじゃない。

相手が衣沙ならいいなあって、そんな風に思ってるだけで。……なんていう心の声を読んだみたいに、なるせはおもむろに衣沙を見た。そして。



「……付き合えば?」



隣でめずらしくずっと黙って目を閉じていた衣沙に、そう声をかける。

……っ、そうなって欲しいけどちょっと違う!



目だけで「そうじゃない」って訴えているのに、なるせはまるで聞く気なし。

猫みたいに目を細めて、「衣沙兄」と彼を呼ぶ。




「……別にいいけど」



「は、い?」



「付き合うなら付き合ってもいいよ。

どっちみち学校じゃそういうフリしてんだし」



まぶたを持ち上げた衣沙が、わたしを見つめる。

あれ、なんか、めちゃくちゃ機嫌悪くない……?



「ただ、そうなるとフリじゃないし。

俺はキスだってするし手出すけど」



「っ……!」



なにその生々しい話……!

女子高生には刺激が強すぎるんですけど……!