なんて思っていたのが、ダメだったのかもしれない。

俺はもうひとつ、肝心なことを忘れていた。



──日曜日、なるみと約束した日。

本来はなるみの家まで迎えに行く待ち合わせだったのが、なるみが先に済ませたい用事ができたと言うから、駅前集合に変えた。



そしてもうひとつ。



「なんでお前も一緒なんだよ。

空気読んでくれ、なるせちゃん」



「俺だって何が楽しくて衣沙兄と姉ちゃんのデートについていかなきゃなんないの。

仕方ないじゃん。俺だけお祝いしないわけにもいかないんだし」



そう。兄貴と満月ちゃんに対して、俺となるみからのプレゼントだと、なるせが困ってしまう。

だから俺となるみとなるせから、ということでプレゼントすることになった。



なるみとなるせは別にプレゼントしなきゃいけないってことじゃねえんだけど。

長年の付き合いだし幼なじみだし、ふたりともそこはきっちりしておきたいらしい。




用事があるのはなるみだけだから、俺となるせは一緒に駅前に向かう。

最初にほかの女の子との関係を切った話をしたら、「いまさら?」と冷たい目で見られた。



この姉弟は俺に対してすごく冷たいと思う。

というか幼なじみの誰一人として、俺に優しくしてくれない。なるみもたまに冷たいし。



「姉ちゃんもう来てるかな」



「さあ。でもなるみのことだし、」



そろそろ来んじゃねえの?と。

不意に持ち上げた視線が、とある一点で止まる。そして、俺となるせは思わず顔を見合わせた。



……なるみと一緒に、いるのって。



「流(りゅう)兄……?」