「っていうかむしろ、
今までよく我慢してたよねーなるちゃん」
「俺のことそれ以上イジらないで……」
「自業自得だろ。
つーか俺らからすれば、お前が粟田と別れた方がラッキーだったんだけどー!?」
「別れねえよふざけんな」
吐き捨てて、スマホを取り出す。
「衣沙」とすり寄ってきたなるみに視線を向ければ、彼女は大きな瞳をじっと俺に向ける。
「さおと出掛ける約束、断ったから」
俺が強引になるみの予定に割り込んで日時をズラさせたあれか。
やめたの?と聞けば、こくこくうなずいて。
「たぶん、もう誘いにも来ないと思う」
「……ふった?」
「そう、なんだけど……そうじゃない?」
……どっちだ。
あいつがそんなにあっさり引き下がるとも思わねえんだけど、なんて疑ってみるものの。
昼休みになってもツキは教室に来なかったし、俺となるみは約束通り一緒にお昼を過ごして。
途中でばったり会ったけど、ツキが特別何か言ってくることもなかった。
そういや昨日、放課後たまり場に来たツキとなるみが何かを話してたのは知ってるけど。
何も言ってこないってことは、マジであきらめたらしい。
なるみと俺の、お互いの好きな相手がいる発言は嘘で。
女の子との関係も切れて、ライバルもいなくなった。……まさに、願ったり叶ったりだ。