「ほんとに送らなくていいのか?」



「うん、へいき。

霧夏寄って帰るから、送ってもらったらむしろみんなびっくりしちゃうもの」



「……なるみ」



──ほら。

今回も、例外なんかじゃ、なかった。



「衣沙……」



「……学校抜け出したと思わなかったから探した。

霧夏のメンツに聞いたら来てないって言うし、さすがにちょっと焦ったけど。なんで東と一緒にいるのかも気になるけど、今は聞かないでおく」



艶やかな黒髪が揺れて。

彼の伸ばした手が、わたしの頭を撫でる。




「帰ろ。……ちゃんと話したい」



「や、やだ。話したくない……」



「……なら話さなくていいから帰ろ。

別にお前のこと責めたりしないから」



な?と、顔を覗き込まれて、泣きそうになる。

……優しくしてくれるのが、すごく、うれしい。



うれしいのに、切なくて、きゅっと衣沙の制服を握った。

そうすれば彼は小さく笑みを浮かべて、わたしの肩を自分の方へと抱き寄せる。



「"俺の"なるみがご迷惑おかけしました」



あ、わたしもまだみんなにお礼言ってない……!

そう思って振り返ろうとしたら、わたしのことを抱き寄せている腕の力が強くなって。