指定された場所へいくと、さえないGパンに眼鏡をかけた男が立っていた。





なんとなく、先週いたかもしれない。





「あの、ヤマジさんですか?」





私もいつもと同じように、ワントーン声色を変えて話しかける。





いつもの少し大人びたワンピースを着て、なるべく未成年という風に見えないように努力していた。





「オシロちゃん、覚えててくれたんだね」





覚えているわけないだろ。
紙に書いてあるなんてこと、内緒にしたまま、私は笑顔を崩さない。





「もちろんだよ、呼んでくれて嬉しい」






心にも無い台詞が勝手に口からでてくれる。





男はデレッとした表情を浮かべた。





気持ち悪い。






「で、どこいこうか?」





ヤマジについていき、近くのカフェに入る。
一番奥の人から見えにくい場所に座ると、ヤマジは先週のデートの復習を私に語ってくる。





それを、愛想よく私は頷いていた。





語ってくれても、私の頭には残らないんだけどね。