「そ、れは……時間ちょうだい」



永人は日奈子のことは関係ないっていうけど、やっぱりあたしそうはいかなかった。


「いいわ。毎日アピールするから」


「はぁ?」



嘘の恋人になるのに、そんな必死にアピールするもの?



「だってその方が俺らがほんと付き合ってたんだってなって……俺の追いかけは減るだろ」


「自分の利益のためかよ……」



とことんあざといやつだ。



「千花が俺に振り向いてくれなくても追いかけて、そんで他の男牽制してやるから」


なんていう、永人には本当に適わない。
だって、ちゃんとあたしの利益も考えてるんだから。



「牽制役頑張ってね」


「おう!……ってなんでそこ他人事なわけ?」



永人と久しぶりにこうして話せた気がしてなんだかくすぐったい。
あたしは、やっぱり永人と話したかったんだ。

ずっと、なんとなく感じてたけど。
今日ハッキリとわかった。

永人はあたしのこと〝大事〟だっていうけど。
あたしも永人のこと〝大事〟だから。

でも、日奈子のこともあるし。
もう少し、追いかけられるっていう設定も悪くない。

こうして、あたしと永人の攻防戦は繰り広げられた。