「南々瀬ちゃん。

……正直それについては、あなたが謝る必要はどこにもないと思うの。むしろあなたは、政府の人間に利用された側なのよ?」



「はい。

ですが、結果として珠王グループに損害を与えてしまったのはわたしの責任だと思っています」



「………」



難しい取引がまだわたしにはわからないし。

未成年ということもあって、そのあたりのことはまたしても両親に任せてあるから詳細は知らない。



実験棟だって、少なからずウチも手伝えることはしてるはずだけど。

それでも迷惑をかけてしまったのだと言ったわたしの頭に、いつみ先輩が手を乗せた。



「こういうヤツだよ、南々瀬は。

……だから、放っておけなくて心配になる」



ちょっぴり呆れたような声だけど。

優しさのあふれる視線でわたしを見下ろした彼は、乗せたままの手を動かしてわたしの頭を撫でた。




「いくら南々瀬の両親が珠王にとって有益な研究員だったとしても。

南々瀬自身は、自分が起こした行動によって生まれた損害を気にする」



「……ええ、そうね。

いまの話を聞いて、それはよくわかったわ」



「優しいんだよ、ばかみたいに」



……それって褒められてるんだろうか。



「だから、南々瀬がこれ以上自分のことばかり犠牲にしないように。

……できるだけ早く籍を入れたいと思ってる。できれば南々瀬の高校卒業と同時に」



スッと、お父様が目を細めた。

そしてわたしを見ると、「プロポーズされたのか?」と一言。



ああいつみの瞳ってお父様によく似てるんだな、と思いながら。

声に迷いが混ざらないよう気を引き締めて、「はい」と返事した。