「南々瀬ちゃんのことを好きだからか?」
一年前の俺なら。
……いや、半年前の俺なら、たぶんそれにうなずいた。好きだから応える。それで十分。
「ナナに、守ってもらったから」
あまりにも愛しくて、忘れられなかったけど。
らしくない言い方をするなら、ナナは俺のヒーローみたいだって、思った。
「ナナが留学する前、俺は仮にもナナの彼氏で……
仮にも、誰よりも一番近くにいて、」
一番近くに、いたのに。……なのに。
俺の勝手な都合で、見送りさえ行ってやれなかった。
ナナが、俺が傷つかないようにヴェールで包むような優しさだけで大事にしてくれていること。それは、何よりも俺の記憶が証拠だったのに。
……なのに、好きだから、臆病になって。
情けなくも、どうすることもできなくて。
「ナナのことは、俺には救えない」
救えるのは、何度聞いたっていつみだけで。
ハワイに旅立つ前にナナの話を聞いて、いつみなら間違いなく救ってくれるんだろうって思った。
実際、ナナのことを救ってみせた。
だから俺には、ナナのことは救えない。
だけど、
生徒会役員に指名された時、決めたことがある。
「生徒会役員が、
ナナの恋人の次に、近い位置だから」
好きだからなんて単純な理由じゃなかった。
そんな理由でもし生徒会役員になっていたとしたら、今頃俺はナナのことを泣かせてでも、自分のものにしてる。



