俺はよく図書館に通っていた。
こういう容姿なだけあって、テレビには出てなくても、女子から騒がれたりする。
でも図書館なら静かだからうるさい声が耳につくこともないし。
地元の図書館は設備が良くて、さすがに最新号は置いてくれなかったけど、ひと月前の雑誌をたくさん置いてくれていたから。
借りれば家で読めるのに、なんとなくその静かな空間が好きで、雑誌を眺めるために訪れていた。
──のは、半分うそで、半分ほんとうで。
雑誌コーナーに置かれた椅子に座れば、ちょうど見える場所にある自由席。
勉強しても良いし、本を読んでも良いその席に。
「……その本おもしろい?」
「え?」
綺麗な女の子が頻繁にいるのを、知っていたから。
「あ、」
やば……と、思わずかけてしまった声をおさえる。
兄貴が夕飯に来るってことを、朝聞かされたその日。なんだか雑誌を読むのに集中できなくて、いつも同じ場所にいる彼女にすこしだけ近寄った。
そしたら、活字嫌いな俺からすれば絶対に読みたくないような分厚い本を、テーブルに乗せて。
真剣に、綴られた文字を追っていた彼女。
俺には真似できない行動に、思わず声をかけてしまっていて。
顔を上げた彼女は、おどろいたような顔をしてたけれど。
「……うん、おもしろいよ」
そう言いながら、目を細めて、微笑んだ。
その笑顔が、あまりにも綺麗だった。
……ばかにされるのが嫌で黙ってたけど。綺麗な表情で笑うその姿を、もう一度見たくて。



