「っ……まだ朝なんですけど!」
羞恥心に耐えきれなくて、たまらず叫ぶ。
けれどどこ吹く風で、丁寧に焼き魚の身をほぐして骨を取り除いているいつみ先輩。温度差がひどい。
「ああ、まだ7時前だな」
「そういうことじゃなくて……っ」
「あんまり騒ぐと近所迷惑って言われるぞ」
誰のせいだと思ってるんですか……!!
……と、頭の中で文句は浮かぶのに。平然としている先輩のことを見ていたら、その気も失せてしまう。なんなんだ、まったく。
この人も大抵わたしのことを揶揄って遊んでいるんだからタチが悪い。
それでも。
「、」
とん、とテーブルに手をついた彼が。
身を乗り出すと同時に、くちびるが、触れる。
ほんのわずか。
たかが淡い触れ合い、だけなのに。
「……かわい」
離れる直前に甘い声でそう囁かれたら、あっさり許してしまう。
びりびりと、脳裏が痺れる。さっきの彼の発言で一度熱を上げた頬は、別の甘さで染められていた。
「……もういいです」
拗ねてなんかないけど。
拗ねたようにつぶやいて、もくもくと食事を再開する。どうせそれにも気づいているんだろう。いつみ先輩は案の定ふっと笑みをこぼしただけで、それ以上何も言わなかった。



